渡辺宙明卆寿記念コンサートVol.1を終えて

渡辺宙明卆寿記念コンサートVol.1を終えて(訊き手:西耕一、小林淳)構成:西耕一 



渡辺宙明卆寿記念コンサートから4日の9月3日。コンサートで御客様から戴いたアンケートを持って、宙明先生へコンサートの御礼と御感想のインタビューへ行って参りました。先生はコンサート後の疲れを微塵も見せず、コンサート後はすぐに何件も仕事がらみの来客があり、今日もテレビ局から出演の依頼があって電話をしていたんです、と御登場でした。

 


西 30日は本当にありがとうございました。御客様だけでなく、演奏者も涙が出てきたという感想も多かったですね!

渡辺 いや~、ありがたいですね。

小林 生きてて良かったという感想もありましたね。

渡辺 そうですか! 僕こそ生きててよかったですよ!(笑)

小林 先生の指揮で歌えたのは一生の思い出ですと。

渡辺 あれはね、アイディア良いですね。わたしは想像もしなかったです。歌を指揮するのがあんなにも喜ばれるとはね。Twitterの反響も物凄く多くて全部読みきれない!(笑)

 

アンケートを受け取って

 

西 御客様のアンケートは全部で252枚でした。 

渡辺 おー!(アンケートを少し読みながら)いろんなコンサートに行きましたが、今回ほど感動したことはない!嬉しいですね!聴くジャンルがプログレ、クラシック、ヒップホップ、いろんな方がいたようですねえ。ちゃんと書いてありますね~。綺麗な字で・・・。裏まで書いてある(笑)住所氏名も書いてあるのがいいですね。全国から来てくださったんですね~。63歳の人も、30歳の方も、男女いろいろときてたんですね~。これはスゴイですね。毎日少しずつ楽しみに読んでいきます。すごいな~。キシっと書いてあるね~。こういう仕事をやっていてよかったな~と思います。こんなありがたいことはないですね。ほー!病気で生きる気力を失っていたときにサンバルカンで生きる気力が湧いてきたと・・・。こういう方も多いようですね。

西 当日は、お花もたくさんきていましたね。

渡辺 串田アキラさん、水木一郎さん、田中公平さん、和田薫さん、フジパシフィック音楽出版、日本コロムビア、サンライズ、渡辺宙明コミュニティー、ファンの皆さんからもたくさんいただきましたね。お礼をしなきゃいけない。ありがとうございます!

 

西 そういえば、名古屋の中日新聞も、こないだの東京新聞の記事が、コンサート前日の8月29日の夕刊に載って、宙明先生の地元でも話題になったようです。

渡辺 おお。嬉しいですね。名古屋では皆が読んでいる新聞ですからね。あの記事は詳しかったですからたくさんの方に読んでいただけるといいですね。

 

西 プレトークはいかがでしたか? 「プレ」とは言え、御客様が満員でしたね。

渡辺 全部券が売れていますから、満員でも驚かなかったですよ。

小林 普通、プレトークはあまり人が集まらないですよね。他の作曲家ではこれまでプレトークに人が集まったことはないです。初めてのことでしたね。

渡辺 そうですか!それは知らなかった。最近はTwitterでもそういう雰囲気が感じられていましたが、これはもうちょっと作曲をやらにゃイカンな!と思いますね。


 

コンサートの御感想

 

西 リハーサルに立ち会われて、公演はマジンガーZとグレートマジンガーから始まりましたね。

渡辺 これはCDアルバム『渡辺宙明グレーテストヒッツ』をだいたい踏襲していると思うので、まとまっていると思います。音響は座っている位置にもよると思いますが、生演奏ですのでバランスの問題はあると思いましたね。わたしは、サントリーホールでもオーチャードホールでも二階で聴きますからね。今回は1階の真ん中でまた違った印象を持ちました。

西 コントラバスが加わった編成でしたね。

渡辺 コンサート用となるとオリジナル編成に少しアレンジを加えてもいいかもしれない、という部分もありましたね。次回からは堀井さんと相談して決めていきたいと思います。

西 大鉄人17ではオリジナルの魅力を味わった、という方もいましたね。

渡辺 この当時は、予算がなくて編成が小さいものもありましたからね。トランペットのユニゾンにピッコロを加えるなんてこともしてもいいかなと思った部分もありましたね。まあ、あえてオリジナルをこれから変える、ということでなく、そういうアイディアもあるかもしれない。ひとつの案ですね。

 

 

生演奏の宙明サウンドを味わって。オーケストラが初めてでも楽しめたコンサート

 

西 オーケストラのコンサートに初めて来た方も多かったようですね。

渡辺 そうですね。今はクラシックの聴衆は減ってきているので、こういった形でオーケストラを聴きにくる方が増えたら嬉しいですね。

小林 リアルな音をはじめて聴いて圧倒された方もいるようですね。

渡辺 ブラスの音や、ティンパニの音も迫力ありましたね~。

西 ブラスはもちろんですが、今回の大鉄人17は打楽器がティンパニだけになってしまいますし、この楽器にはこだわりを持って演奏者を選びました。

渡辺 普通のティンパニではなく、現代音楽に近いような使い方もしますね。

西 ティンパニとしても一番Maxな表現を強いていますよね。

渡辺 硬めのバチでバチィ-ンと出る、あれがいいんですよね。ブラームスの曲などでの使い方もどん、どん、とあまり目立たないですからね。

西 シンセの音もオリジナルに近い音で鳴っていましたね。リズムセクションもオーケストラとの演奏に慣れているメンバーを探して、頼みました。

渡辺 座る位置でだいぶ違いましたので、次回はさらに良くしたいですね。2階だとバランス良かったかも知れません。息子のオーケストラコンサートで聴いても、バランスはいろいろと考えますね。

西 大鉄人17は、今回の演奏ではじめて御客様はステレオの音を聴いたわけです。

渡辺 そうですね。これは当時モノラル録音でした。ブラスの魅力が味わえたと思います。

西 楽器の件ですが、ドラムスの待山さんは大学時代はシモンズドラムの研究をしていた方で、今回提供のシモンズやベルツリーも彼の所有楽器です。こういった楽器はなかなか手配し難いので、ありがたかったですね。 

 

 

ミラクル戦隊ナマコプリについて

 

西 その後、夜だけでしたが、ナマコプリも評判良かったですね。

渡辺 もう1曲書く約束をしていますから、こんどはメイジャー(長調)の曲を書くつもりです。戦隊物ではなく、明るい曲を書くつもりです。

西 ナマコプリでは先生がさらわれそうになってしまう。どうでしたか?

渡辺 ちょっと意外ではありましたね。どうなることかと思いましたが、意外によかったですね。

小林 あの寸劇があったから、つながりがとても良くなりましたね。

渡辺 あれは良かったですね。

西 最初に、カワムラユキさんとナマコプリさんで会議をしたのですが、そこで、こういった寸劇を加えてみませんか?とお話したのです。

渡辺 ああ、西さんの案でしたか。

小林 指揮者の松井さんやフルートの向井さんも加わって、お客さんと一体感がありましたね。

 

渡辺 松井さんの指揮も良かったですね。

西 松井慶太さんは、合唱もオーケストラも、ポップスオーケストラでも高く評価される若手の逸材ですからね。オーケストラのメンバーには松井さんと同じ頃の東京音大の精鋭も居て、一体感ある演奏でした。斎藤ネコさんの編曲もよく鳴っていましたね。

渡辺 うまいですね。戦隊物にしようと作曲したのでね。

西 ナマコプリさんは、楽屋でもずっとネコさんがピアノを弾いて、練習していたんですよ。カワムラユキさんもずっと付きっきりでしたね。

渡辺 そうですか。ありがたいことです。


 

サンバルカン組曲について

 

西 つぎはサンバルカンでしたが、オリジナルの弦楽はヴァイオリンだけだったのを弦楽4部に堀井友徳さんが増やしたものでした。

渡辺 違和感なかったですね。

小林 これが元だったのかと思うほどの見事なアレンジでしたね。

渡辺 ヴァイオリンだけというのはね、ちょっとは中音部もないと溶け合わないですよね。シンセで埋める場合もありますが、生演奏はレコードみたいにいかないですからね。

西 オーケストラ・トリプティークは元々、絃楽オーケストラとしてスタートした団体ですので、ストリングスもブラスと打楽器の爆音に負けじと頑張っていました。そういえば、ギャバンもオリジナルはヴァイオリンとチェロだけでしたね。

渡辺 ヴィオラは、ある意味で地味な楽器ですが、ないとつながりが悪いんですね。当時予算がない場合は、マルチで録音できなくてモノラル一発でやることも多かったんですよ。

西 今回の録音は、伊福部昭百年紀でも評判が良かったオクタヴィア・レコードの江崎さんに頼んだのです。宙明先生にとっての初めてのコンサートですから、その記念として、出来る限り最善の録音をとセッティングしました。小林研一郎やチェコフィルや、世界中のオーケストラを録音している方です。ハイレゾで収録していますので、今後、宙明先生の音のアーカイヴとして、どんな展開でもできるようにと考えています。モノラル録音しかなかったものが、いきなりマルチのハイレゾとして収録されたわけですから、比較して聴くのが楽しみです。

渡辺 それはオーディオマニアも期待しそうですね。クラシックでは売れる枚数も少ないでしょうからね。今回のライヴCDは500枚ってことはないでしょうね! オーディオチェックCDとしても使えるかもしれませんね。ハイレゾとはありがたいことです。

西 また録音が仕上がってきたら、先生に御確認頂く予定です。よろしくお願い致します。


 

スパイダーマン組曲について

 

西 この作品は聴いたことない、という方もいらしたのですが、その完成度の高さに驚いた、という意見が多かったですね。友人の現代音楽の作曲家が聴いて、これはすごい曲だ。楽譜をみて勉強したい!という感想もありました。

渡辺 ほう!現代音楽の方もきていましたか。これは、当時のコロムビアの木村部長の奥さんが安倍圭子さんなので打楽器をたくさん使ってほしいと、不承不承でしたが、やってよかったですね。

西 作曲は相当大変だったのでは?

渡辺 作曲も大変でしたが、録音も大変でした。録音ブースもいっぱいになってね。

西 今回も打楽器陣のスペースが一杯一杯で、楽器を運ぶ巨大なトラックや車が何台もきて、搬入口が大混雑で、すごかったんです(笑) それこそ、トランスフォーマーのコンボイみたいな車でヤマハの5オクターブの特製マリンバが来た時は、思わず口がポカーンと開いてしまいました。

渡辺 スパイダーマンは、向こうの原作者からも東映は面白いことをやるな、と言ってきたそうです。

小林 今回は、スパイダーマンとギャバンが1番大作で、どちらも20分近くありましたね。

西 この間に、俊幸さんのバースディがありましたね。

渡辺 あれは驚きでしたね。一体何をやるかな?とね。その数日前にも一緒にフランス料理を食べましたが、一切言わなかったんですよ!(笑)

小林 さすが口が固いですね(笑)

西 編曲も素晴らしかったですね。

渡辺 彼はオーケストレーションが素晴らしいですよ。いつも大編成で書いていますね。楽譜ソフトのシベリウスを使って打ち込みで書いているらしいです。


 

ギャバン組曲について

 

渡辺 これは良かったですね。

小林 良かったね~。

西 クラリネットのソロや、ギターのソロなどじっくり浸れる部分も多かったですね。

渡辺 このギャバンを作った年に俊幸が帰ってきて、頑張らなイカンな~!と書いたんですよ(笑)

西 凝ってますよね。

渡辺 予算が少なくて弦楽が使えなかったのを、自腹を切ってヴァイオリンとチェロを入れたのですが、この版はさらに大きな編成で弦楽を使っています。

小林 レーザーブレードのスペクタクル感はかっこよかったですね。弦楽のみなさんも一生懸命にノリノリで弾いていましたね。

渡辺 これはクロマティックな音の動きにハッキリしたラッパのメロディーを入れるという。

小林 アンコールのレーザーブレード三連発も素晴らしかったですね。

渡辺 あの3つは少しずつ違うんですよ。

西 どれも「渡辺宙明」で、どれもレーザーブレードだけど、どれも違う3種類なんですね。

小林 素晴らしかったですね。


合唱アンコールについて

 

西 最後に先生にお出まし頂いて、指揮をして頂きましたが、歌詞は誰も見ていなかったですね。

渡辺 これは驚きでしたね。皆さんはしょっちゅうカラオケで歌っているんですね。歌手ならば歌詞を忘れることもありますが、大きな声でしたね。驚きでした。今回は自分たちだけで歌う、ということでより大きな声で歌ってくださったんですね。

小林 ファンは先生の指揮で歌うのが夢だったんですよね。

西 ホールに満員の御客様が歌う声が響き渡って、舞台にも飛んでくる。私は昼は客席、夜は舞台で聴いたのですが、舞台に飛んで来る声の迫力は一生忘れられないですね。

渡辺 皆さん、一生懸命歌っていましたね。

西 先生のにこやかな指揮も良かったですね。

渡辺 それはありがとうございます。

小林 プレーヤーの方も嬉しそうでしたね。

渡辺 指揮は多少習ったこともありましたし、CBCの頃は全部指揮していましたね。新東宝の頃やテレビの頃も指揮しましたね。

西 指揮しながら何か思ったことはありましたか?

渡辺 間違えないように、と考えてましたね(笑)

小林 本当に一体になっていましたね。

西 感慨深かったです。御客様だけでなく、演奏者も何人も涙が出てきたとか、もらい泣きしたとか。

渡辺 ありがたいですね。 

渡辺 (当日の写真を見ながら)この写真は記念ですね~。こんなところにもお客さんが居たんですね。

小林 みんな先生を見ながら歌っていましたね。

西 先生が指揮をしているのに、先生を見ながら歌えないなんて残念ですしね。

渡辺 動画はないですか?

西 あります。次回お渡し致します。

渡辺 それがあればDVDも出せるかもしれませんね。

小林 ライヴCDはいつになりますか?

西 それは3月5日のVol.2コンサートで先行販売できるようにしたいですね。

渡辺 日活CDも売れるとありがたいですね。(CDをみながら)これはいいデザインでしたね。コロムビアのボックスは30日の昼の部だけで50セット全部売れたそうで、これは嬉しかったですね。ザ・カラテは、映画の映像を見ないで書いた唯一の映画でしたが、サントラCDも30日に先行販売されましたね。

小林 先生のサインがつくからとコロムビアのボックスをもう1セット買われた方もいたそうです。日活CDもこんな立派な色紙を頂いていいんでしょうか、と言っている方もいましたね。サイン色紙はなかなかもらえませんから、これは額に飾ることもできますね。



記念写真撮影タイムについて

 

渡辺 あれは良かったですね。

西 フラッシュで目が痛かったりしなかったですか?

渡辺 距離がありましたから、大丈夫でしたよ。あれはいい企画でしたね。普通だと撮影禁止ですけどね。ああいうファンサービスはいいですね。

西 映画の記者会見でも取材陣に向けてフォトセッションタイムというのがありますから、それをヒントに思いついたんですよ。しかし、大事なのは演奏家も宙明先生も撮影タイムを快くOKしてくださったことです。それがなければ出来なかったことです。本当に感謝です。

渡辺 ともかく画期的な出来事で、誰もやったことのないコンサートになったと思います。52ページのパンフレットも本になりそうですね。

 

 

コンサートの後の反響

 

西 御客様のTwitterやブログやFacebookもすごい反応で、嬉しかったですね。東京新聞のTwitterは、コンサートの後すぐにコンサート写真をアップしてレポートしてくださいました。

渡辺 おお、そうですか! 記事も詳しくて読みやすかったですね。

西 野球やサッカーの速報のように、コンサートの終ったあとの新聞社の速報がでたのも、こういった種類のコンサートでは聞いたことがなく、宙明先生だからのことでしょうね。ちょっと驚きました。一昔前ならば号外が出るような感覚でしょうか。

小林 私の隣に和田薫さんが座っていましたが、とても喜ばれていましたね。和光サンアゼリアの館長藤田崇文さんもすごく喜ばれていましたね。

西 オーケストラメンバーも、宙明先生のコンサートならツアーにできるんじゃないかとか言っていましたね。それだけ音楽の魅力と反響を感じたということでしょうね。

渡辺 なかなか費用の問題もあるでしょうが、名古屋や大阪などの大都市ならそういうことも出来なくはないかもしれないですね。

西 今回は、良い意味で前代未聞、世界初の目白押しでしたね。それもすべて「渡辺宙明」だからできたことで、先生の協力なしには出来なかったことだと思います。演奏者も全力で先生の味わいを出そうと協力してくれたし、指揮者の松井さんもリハーサルの前にリズムセクションのサウンドチェックを設定したり、じっくりと音の調整もしてくださった。良い意味で普通ならばあり得ないようなことがありました。関わった全員が最大限の協力を惜しまなかった。そのすべてが、先生のお人柄と作品の素晴らしさに応えたい!先生の卆寿コンサートを成功させたい!と善意からのことでした。御客様も宙明先生への長年の思いと感謝の気持を全力でぶつけてくださった。本当にあたたかく、そしてノリの良い御客様でした。思い出すだけで胸がジーンと熱くなりますね。俊幸さんやナマコプリさん、そしてボランティアで協力してくださったスタッフもたくさん居ます。本当に感謝しきれないです。この場を借りて宙明先生と、関わったすべての方々に深く御礼申し上げます。

渡辺 ありがたいですね。卆寿といっても、卒業じゃないですから、これからもまだまだ作曲を続けますよ! 僕は曲を書く時は一生懸命書きましたが、専門家に良くみられようなどとは考えませんでした。ファンの皆さんに喜んで頂くのが何よりですね! 来年も楽しみにしていてください!

(2015年9月3日、渡辺宙明スタジオにて。撮影:西)