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オーケストラ・トリプティーク第四回演奏会への意気込み

オーケストラ・トリプティーク第四回演奏会への意気込み(訊き手:西耕一)


2015年11月13日(金)東京オペラシティリサイタルホール、オーケストラ・トリプティーク第四回演奏会「作曲家と日本の響き」への意気込みを、コントラバスソリストの佐藤洋嗣氏、作曲家の山本和智氏、コンサートマスターの三宅政弘氏、指揮者の水戸博之氏に、取材を行った。

 

佐藤洋嗣「これまでは、ピアノ伴奏でのコントラバス協奏曲を弾いたことはありましたが、オーケストラとの共演は初めてで、また、山本和智さんが書いた3曲の協奏曲の最後の締めということで、楽しみにしています。新しい作品を初演することはとても意義のあることだと思います。」

西「山本和智さんの曲の魅力は?」

佐藤洋嗣「コントラバスのパートの、意欲的な新しいテクニックや奏法など興味深いです。

山本さんの作品は、奏者がびっくりするようなことがたくさんあるので、演奏してみないとどうなるかわかりません。曲の中には夜の音楽が引用されていて、富山のおわら節など盆踊りのメロディーが入っていたり、バルトークの絃チェレにヒントを得ていたり・・・。」

 

西「この曲に引用された音楽とはどんなものがあるのでしょうか?」

山本和智「聴いていたらわかると思います(笑)。今回は、コントラバスを魅力的な楽器だな、と思うよう書いてみました。けれども、まだ自分の中でうまく使いこなせていない思いもあって、作曲を通じてものすごく可能性のある楽器だと感じました。」

西「佐藤洋嗣さんはどのような奏者だと思いますか?」

山本和智「作曲には洋嗣さんと何度も打ち合わせして、ハーモニクスなど考えましたが、とてもストイックな方だと思います。」

西「コントラバス協奏曲は、3部作の最後を飾る曲とのことですが?」

山本和智「尺八協奏曲、箏協奏曲と作曲して、一番最後に初演するのがコントラバスであるということもあって、書いているうちにいろいろと考えました。尺八協奏曲は、浮遊したイメージで、それが箏協奏曲で結晶して、最後には浮遊したものが地に落ちるというイメージです。箏のために作った曲「散乱系」は、「乱れ」が形を変えていく。それが最後は雪音というバスドラムの音になって落ちてベースの音になっていくんです。コントラバス協奏曲は太鼓の音から始まるんですが、コントラバスで地に落ちる、というイメージがあって、それを如実にあらわした箇所もあります。この3つのシリーズは、1曲めが息の音、2曲めが笛の音、3曲めがズバッと終わるよう書いてあって、これ以降続く、ということはないように書いてあります。いつか協奏曲を3曲続けて演奏して欲しいと思いますね。」

 

西「日本の作品を演奏されるときに思うことは?」

三宅政弘「日本人の作品には、西洋の作品とは違って、自然に出てくるものがあると思います。いい曲なんだけれども、あまり知られていないのが残念ですので、そういう曲を知って頂く機会になればと思います。」

 

西「今回のコントラバス協奏曲についてどう思われますか?」

水戸博之「いろんな特殊奏法がありますし、奇抜なアイディアもありますが、すごく静謐なサウンドのなかで、いろんな要素もはいっています。未知数なことも多いですが、それも楽しみです。」

西「今回のコンサートについて」

水戸博之「どれも親しみを持てる曲ばかりです。ひとつひとつが魅力的な輝きを持っていて、メロディーも美しい。また、ほかのコンサートと違って、作曲家が立ち会ってリハーサルを重ねて、初演を迎えることができる。作曲家の生きた声をキャッチして、演奏するというのはなかなかできることではありません。現代音楽をはじめて聴く方にも臆することなく、楽しんで頂けると思います。」